たまたま最近出会った方々から“デザイン思考”という名前を聞くことが増え、ずっと気になっていたことから記事を書くことにしました。
デザイン思考とは、デザイナー的な考え方を経営やビジネスに取り入れることで、新たな課題を解決する思考方法のことを指します。
では、デザイナーは普段、どんな考え方や発想をしてクライアントからの要望や依頼に応えているのか。
筆者も資料作成代行という“デザイン”に関わる仕事をしている身として、すこーしだけ勉強してみました。
ビジネスマンにとって、デザインという言葉を聞いた瞬間に苦手意識を感じる人も多いでしょう。業務上何かを作ったり、描いたりすることが無ければ自分には無関係だと思ってしまう人もいると思います。
しかし、そもそもデザインとは、もともと“設計”を意味し、計画的な行為全般を表す言葉なのです。
「今度のプロジェクト、目標達成をするためにデザインしよう」と言われるとピンときませんが、「今度のプロジェクトを成功させるために全体の構成を設計しよう」と言われるとピンときますよね。
つまり、デザイン思考は物理的な制作物の有無に関わらず、物事を設計する時の考え方を設計のプロであるデザイナーから取り入れよう、というところから生まれているのです。
デザイナーというと、皆さんはどんな印象を持たれますか?直感や感性に優れていて、個性が強く、ファッションセンスがあって…などそれぞれが持っているイメージがあると思います。
デザイン思考を取り入れる目的は、直感や感性を大事にした右脳を単に鍛えるということではありません。一般的に思考法というと、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングといった左脳のイメージが強いと思います。
デザイン思考が目指すのは、右脳と左脳を両方活用できるハイブリット型の思考なのです。筆者も典型的な左脳型タイプの人間のため、デザイン思考の習得にさらに関心が高まりました。
では、デザイナーは具体的にクライアントからの様々な依頼に対して、どんなステップで課題解決をするのでしょうか。様々な書籍やメディアで表現や内容が若干異なると思いますが、共通しているのは主に3つのステップです。それは、
1.インプット
2.アイディアの展開
3.アウトプット
の3つです。私たちも例えば何か一つのプロジェクトを行う際、情報収集してインプットし、そこから会議や打ち合わせを重ねてアイディアを膨らませ、戦略や計画を実行できるようなアウトプットをしていくと思います。
その大まかな流れは変わりませんが、具体的な方法は様々な点で異なっています。
ビジネスシーンにおける、インプットはファクトベース、つまり事実に基づいた情報や統計を頼りにすることが非常に多いです。
一方、デザイナーは“ビジュアルを集めビジュアルで考える”ことを重要視しています。例えばそれは、写真や動画を集め、様々な場所を訪れ、対象者にインタビューをするといった行動です。
つまり、五感に触れさせることで“生の体験”をとにかく増やし、アイディアを展開するための引き出しをとにかく増やすのです。
仮に、クライアントから“今までに全くないデザインと機能を持った鞄を作る”という依頼を受けたとしましょう。
それを受けて、ファッション誌の写真を集め、街中に出歩いてどんな鞄を身に付けている人がいるかを観察し、日本だけでなく世界の様々な場所を訪れて違いを見つけ、独創的な鞄を作っているメーカーをインタビューするといったことを行っているのです。
その時のポイントは“振り幅”。人間軸で極端に異なるタイプの人にインタビューする、分野軸で女性のファッションバッグと登山家向けのバッグを調べるなど。
他にも、地域軸でアジア・ヨーロッパ・アメリカを比較する。時間軸で江戸・昭和・平成を比較する。そういった振り幅が大きくなればなるほど、インスピレーションが高まりアイディアを生みやすくなるそうです。
今までに全くないものを発想することが、私たちビジネスマンにとってどれだけ難しいかは想像に難くないでしょう。そんな中でデザイナーは0から1を生み出す必要があります。
細かな手法はさておき、主にアイディアを展開する時は3つの手段が用いられることが多いようです。一つは、アイディアを統合させること。例えばA×3×■という今までにないものを無理やり組み合わせることで新たな発想をします。
二つ目は、大量のインプットから共通点を見出すこと。三つ目は前提を取っ払うことです。これらを中心に収集したインプットを質の高いアウトプットへと繋ぐ架け橋にしているのですね。
私たちが普段アイディアを話し合う際、個々人の経験則に基づいた思い付きや、過去の成功事例やパターンを用いることが往々にしてありますよね。
デザイナーはそうではなく、アイディアを発想する一定の型を高い質によって意図的に発想しているのです。こういった取り組み方からも右脳と左脳両方を用いていることが分かります。
インプットしたものをアイディアとして発想させたらいよいよアウトプットです。ここでも大きく3つの型を用いていると「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」では述べられています。
一つ目は、アイディアをそぎ落として凝縮させること。例えば、一枚のポスターで表現したり、一言のキャッチコピーで表したり。
デザイナーの仕事はほとんどのケースが何らからの目に見える成果物にアイディアを凝縮させる必要がありますから、自然にアイディアを凝縮させるアウトプットが非常に得意のようです。
二つ目は、ストーリーの設計。アウトプットにどんな意味やメッセージを持たせ、受け手の感情に働きかけるかを常にデザイナーは考えています。
三つ目は、体験をデザインすること。デザイナーが創造した成果物をどのように体験してもらうのか。それを考えることも非常に得意です。
何故ならそれは、デザイナーが常日頃からたくさんの物事に触れ、体験をしてインプットしているからです。
デザイン思考が必要になった背景は様々な仮説が立てられると思います。時代や経済の変化のスピードが極端に速くなったことは原因の一つでしょう。
それによって、繰り返しビジネスをデザインしては実験し、組み替え、作り直さなければ時代の変化に追いつけなくなっています。
それに伴ってユーザーも新しいアイディアやサービスを取り入れるスピードが速くなった一方で、捨てるスピードも増加しました。
そういった時代においては、今までの成功パターンや統計だけでは、ユーザーのニーズを捉えきれなくなってきているのではないでしょうか。
つまり、今現在とこれからの潜在的なニーズをデザインしてビジネスとして実現する必要があるからこそ、デザイン思考が求められていると筆者は感じております。
今回、私がデザイン思考を勉強するために読んだ書籍は、「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」です。
デザイン思考初心者にとっては非常に読みやすく、必要な時代背景から具体的なプロセスまで丁寧に解説してくれています。気になった方はこちらもチェック!
今回、デザイン思考に触れてみて感じるのは、デザイナーの思考プロセスの緻密さです。私はビジネスをデザインする際、どうしてもファクトをベースに考えがちです。
しかし、デザイナーがいかにユーザーに焦点を置いてインプットし、アイディアを昇華させてアウトプットしているかを痛感しました。
私たちはもっともっとユーザーに目を向けて五感に触れ、未来の課題を解決していかなければ、ユーザーの潜在的なニーズは満たせないのかもしれません。最後までお読みいただきありがとうございました。