こんにちは、編集長のSeinaです!
最近、M&A業界を賑わしている日本最大級M&A検索エンジンMANDA(マンダ)を7月にリリースした、株式会社MANDAの森田社長にお話を聞いてきました。
ーー本日はお時間いただきありがとうございます。M&Aという業界について、ほとんどの人が実態を知らないと思います。M&Aが必要とされる背景や、業界のリアルなお話を聞かせていただけますか?
日本におけるM&A業界の現状からご説明します。現在、中小企業が400万社ほどあり、経営者が60才以上の会社は170万社ほどあります。さらに、内127万社は後継者が決まっていないと言われています。
高齢化しているのに後継者がいないということは、今後10年で廃業する予備軍の会社がそれだけ存在することを意味しています。
一方でM&Aは年間で4000件くらいしか行われておりません。127万社の廃業しうる企業があるのに、年間4000件しかM&Aが発生していないというギャップを解消しようと思ってMANDAを立ち上げました。
ーー世の中に様々なビジネスモデルがある中、M&Aの業界にフォーカスされたのは何か理由があるんですか?
最初のきっかけは、父親です。父は栃木県でソフトウェア開発の会社を経営しておりましたが、15年ほど前に父親が亡くなったんです。
当時、サラリーマンやってて会社が楽しかったので、実家に帰って継ぐという判断ができなくて。ただ、従業員も10名くらいいたので、発注先や取引会社に迷惑をかけてしまいました。
継ぐという選択肢が出来なくても、第三者に渡すことができていれば事業が継続し、取引先や従業員にも迷惑がかからなかったんじゃないかと思ったんですよね。
1社廃業しただけで、これだけの迷惑がかかるということは、それが日本全国で127万社廃業する可能性があるって、悪い意味で凄いことだな。と感じました。それが一番最初のきっかけです。
ーーいつ頃から真剣にM&Aの業界や事業について考えるようになったのでしょうか?
廃業した時は、僕自身他人事だったというか、親父の会社が潰れたという印象でした。ただ、僕も3年前に会社を退職し、奥さんの会社を経営することになったんですよね。その時に親父ってこんな感じで経営してたんだなって思い起こされて。それから事業の承継や受け渡しについて真剣に考えるようになりました。
ーー1番最初に会社を経営されたきっかけは奥様の会社を受け継いだということでしたが
そうなんです。奥さんがマツエクサロンを経営してたのですが、いろんな事情があって引き継ぐことになり。親族内承継ですね。その時に初めて事業承継というものを経験しました。
ーー未経験の業界の事業を立ち上げるに当たって不安などはなかったのでしょうか?
最初は、不安というよりも、なんていうんですかね。課題解決をできそうな分野をみつけたなっていうワクワク感の方が大きかったですね。
テクノロジーがあまり入り込めてない業界で、テクノロジーを入れれば問題解決できそうだというのがある程度想像ついたので、そこまで不安はなかったです。
ざっくりと事業計画書を書いて、仲間になってくれそうな人に声をかけたら、結構反応も良かったんですよ。一応、三人に声を掛けて、三人ともジョインしてもらったので、100発100中です(笑)
ーーすごいですね!M&Aという業界に入り込んで、事業計画を書いて、仲間を集め実際にサービスを開始するまでの準備期間はどのくらいだったのですか?
準備期間は、約1年間でした。2018年4月にある程度構想を固め事業計画書を作り、それと同時に3人を口説いて7月に会社を設立しました。
ーー元同僚の方を誘ったということですか?
そうです。仕事したことのあるヤフーの時の仲間を誘いました。
ーー仲間を誘う時の基準などはありますか?
まずは、好きなやつと仕事したいです(笑)。あとは、僕自身割と幅広い業務に対応できる方なんですけど、全部40点とか50点くらいなんですね。
ただ、この分野のビジネスの成功確率をあげるには、デザインやプログラミング(エンジニアリング)、法律の分野で100点を目指せるようなスキルや経験が必要だな、と思ったのでデザイナーとエンジニアと弁護士を誘いました。
ーー業界の課題や問題点はどのように感じられていますか?
業界のビジネスモデルを分析すると、買い手と売り手を税理士さんや地銀さんと提携しながら集めて、営業担当が持っているクライアントをマッチングさせるのが主流なんです。
マッチング自体がその営業担当に左右されちゃうんですよね。
例えば営業担当が100人いたとしても、100人がお互いに持っているクライアントを共有するのではなく、個々でマッチングをするといったように会社内で分断されてしまうケースがあります。
ーーそうなると、クライアント側のマッチングが狭くなってしまうという事でしょうか?
まさにそこが業界の課題であり、チャンスだと感じたんですね。営業マン同士の壁は取り払うことが可能だと思うんですけど、会社同士の壁も取り払うことができたらもっと良い買い手と売り手をマッチングできるんじゃないかなと。
MANDA(マンダ)を活用して日本中のM&A案件を探してみよう
ーーM&A仲介会社は、買い手からも売り手からも手数料を取るんですよね。そうなると、どちらかが有利になってしまうことになるんでしょうか?
そうですね。これは両手取引と呼ばれます。結局交渉の場において売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたいんですよ。その間に立っている人はお互いの話を聞いて、落とし所を探る。結局はどっちかのクライアントさんに寄っちゃったりするんですよね。
基本は片手なんだけど、話がまとまらない案件は両手取引で行うのがいいんじゃないかと思ってます。
ーーここまでのお話を整理すると、様々な現状や課題はある同じ業界内で協力し合う体制を作って、より良いM&A環境の実現を目指している、という理解でよいでしょうか?
そうですね。市場環境が変われば、もっと売りたいとか買いたいという件数が増えてきます。
加えて、M&A業界はマッチングにかけてる労力が7割〜8割だと言われています。そこの労力もテクノロジーによって削れるのではないかと思っています。
買い手候補も、日本中にある売り案件から選んだ方が絶対に良いはず。そういう世界を実現したいです。
ーー現状、M&Aという業界の中で、ITを駆使してマッチングを促す仕組みはどの程度実現しているのでしょうか?
ネット上に売り案件を掲載している業者さんはすでに30社くらい存在しています。
ただ、サイト単体で見たら、100人の売り手と100人の買い手がいたら、100対100でしかマッチングできてない。それだと、例えば富山で建築業やっている人が新潟県の建築業買いたいってなってもそんなコアな案件はその100件の中にはなかったりするんですよ。
ーー売り手も買い手も依頼した仲介業者の案件の中からしか探せないのでどうしても可能性が狭くなってしまうので、そこを変えていきたいということでしょうか。
そうです。100対100が、30000対30000になればもっとコアな案件も出てきます。案件の母数が増えれば、本当に取引したい会社に出会う可能性が広がります。そういう世界をMANDAを活用して実現できるんじゃないかと思っています。
ーーMANDAは他の業者さんの案件も縦断して検索できる仕組みになっているとのことですが、どんな仕組みで成り立っているんですか?
簡単に言うとGoogleみたいな感じで、Web上にある会社の売り情報を自動で収集して、会社内でデータベース化して、そのデータベースを一般の方でも検索できるようにする仕組みです。M&AのGoogleみたいな感じですね。
ーー御社の収益は自社案件のマッチングに伴う手数料。それ以外にもあるのでしょうか?
基本はそれだけですね。
ーーそれってかなり勇気のいる選択ではないでしょうか?
結局みんな一番便利で使いやすいサービスにおちついていくっていうか、集まってくるんで。
最終的にはうちが一番便利だってみんな認知してくれれば買い手も売り手もうちをプラットフォームとして使ってくれる。それからいくらでもマネタイズはできると思っています。
ーーその発想の仕方は、前職による影響が大きいのですか?
そうですね。ずっとインターネット業界にいるとこういう考え方になると思います。
ーー事前に想定していたことよりも難しさを感じていることはありますか?
売り手をもっともっと開拓していきたいのですが掲載してもらうまでのハードルが高いんです。買い手は一度使ってもらえれば便利だと思ってもらえるんですけどね。
127万社の潜在的な顧客がいるのでマーケットは大きい。現在は2400社くらいしか売りに出ていないので、3万件、30万件と桁をどんどん上げていきたい。
ほとんどの不動産の情報ってネットに上がっているじゃないですか。M&Aの案件もそういう状況に近づけていけたらいいなと思っています。それが課題ですね。
ーー潜在的な売り手は沢山いるが、そこと接点を作るのが難しいということですね。
そもそも、M&Aに対するイメージが良くない人もいますし、M&A自体を知らない人も沢山います。M&Aなんて自分には関係ないなと思っている中小企業の経営者の方も沢山いるので、認知を広めていきたいのと、M&Aに対するハードルを下げる活動をしていきたいですね。
ーーメインのターゲット層はシニア世代になるんですか?
127万社の内、60歳から80歳の男性経営者が一番多いんです。そうなるとWebのメディアではリーチできないので新聞やテレビでしかリーチできないんですよね。あとタクシーの広告とかもありますけど、浅い情報でしかリーチできないので難しい。
ーーやはりM&Aに対する正しい知識が無いのがネックなんですね。小規模で比較的身近なM&Aの事例ってありますか?
「取引先の〇〇さんが会社をたたみたいって言ってるらしい」と言う話を聞いて、会社を受け継ぐなんてことは昔からよくありますね。
M&Aのよくあるパターンは2つあって、1つは面を広げるM&Aです。例えば、新潟にある建築会社が事業の幅を広げたくて長野にある建築会社を購入するというイメージですね。
もう一つは、垂直に広げるM&Aです。新潟の建築会社さんが新潟の産廃業者や木材業者を購入するというイメージです。
ーー実際にM&Aはどのような流れで進んでいくんですか?
MANDAのサイトを使った流れで言うと、売りたい方が自分の会社名を伏せた状態で情報掲載をします。
例えば、老舗の和菓子屋さんであれば、イチゴ大福が美味しいお店です。売上いくら、利益いくら、従業員何人みたいなことを登録してもらいます。
その次に、情報を見た買い手候補の方からメッセージが届きます。事前に秘密保持契約を結んだうえで、具体的な話をしても良いなと思ったら喫茶店などで打ち合わせをするという流れです。そこで初めて会社名を明かすことになります。
具体的な決算書を見させてもらって魅力的な会社だと思ったら、いくらで買収するかなどの条件交渉に入ります。
売り手としては1社と交渉するだけだと中々条件も固らなかったりするので、複数の買い手と同時進行で交渉を進めるのがお勧めです。
条件には、お金以外にも従業員が守れるかなど複雑なものもあるので、一番条件が合致したところと合意契約をまず結びます。そのあとに、買い手の方がデューデリジェンスという監査・調査みたいなものをするんです。
①〜③の工程で問題が無ければ最終合意契約を結びます。後は株をいつ渡して、いつ入金するかみたいな話になってきます。契約が済んだら、売り手の方は従業員に告知をするという感じなんですよ。
最終合意契約を結ぶまでは従業員の方に伏せていくケースが多い。うちの会社が売られちゃうんだと思うと、じゃあ転職しようかとか従業員が離れちゃいますからね。
合意契約後は、新しい引き継ぎ手の方が従業員とコミュニケーションを取っていくと言う流れです。つまり、PMI(ポスト・マージャー・インテグレイション)と言われる合併後の融合の活動に入っていきます。
ーー最初の交渉に入ってからPMIが落ち着くまではどれくらいの期間を要するんですか?
情報掲載から契約するまでは半年以上かかるケースが一般的ですね。早くても3か月くらい。契約してからPMIはそれこそもう何年何十年かけてやっていくって感じですね。
結局企業と企業って文化というかもう宗教が違うようなもんなんですよ。だから敢えてお互いの文化を残してやるという判断もありますし、企業文化が、仏教の何とか宗と何とか宗くらいの違いしか無かったら統合した方がいいですね。
ーーM&Aするほどの売上の規模じゃない、もしくは決算書の内容を見せるのが恥ずかしいと思う方もいると思います。そんな方でもMANDAへの掲載にチャレンジして良いのでしょうか?
もちろんです。会社には色んな機能があるので。会社全体じゃなくても会社の中のここの機能が欲しいなんていう買い手もいらっしゃいます。それはほんとに事業次第ですが、可能性も大いにありますよ。
ベンチャー企業の場合は人を買うというケースもあります。資産や利益の状況だけではなく、例えばエンジニアの採用費用を加味した上で企業価値が算出されるなんてこともよくあります。Webのメディアであれば、Webメディアのユーザーの質やPV数によって価値が変わります。
ーー私たちも今ビズタスクというオウンドメディアを運営していますが、こういったメディアの需要もあるということでしょうか。
メディアは結構今売れますよ。片っ端からメディアを買いまくっている会社もあったりします。例えば弁護士向けのコンテンツは持ってるけど、会計士向けのコンテンツが無いとかであればそのWebサイトごと全部買ってしまうなんていうケースです。ユーザーがついてなくても値段がつくケースもありますね。
ーーそういったメディアもピンキリでしょうが、大体どれくらいの金額で売買されるものなんでしょうか?
私の知っている会社の例で言えば、1億未満位の金額が多いと言っていましたね。数百万〜数千万くらいであればざらにある世界と考えてもらっていいと思います。
ーー因みにMANDAさんでは特にこの業界のM&Aに注力したい、ということはあるんでしょうか?
いいえ、うちは全般的にですね。127万社の未来を繋ぐのがミッションなので。
ーー将来的に実現したいことやイメージしていることはありますか?
直近の課題は127万社の課題解決なのですが、イグジット(企業のオーナーが株式を売却し、利益を手にすること)を簡単にできるようにしたいです。イグジットができたということは会社を引き継いでいるということなので、またチャレンジできる人が現れたということになります。
つまり、イグジットと再チャレンジが簡単にできるようなプラットフォームを作っていきたいと思っています。今は起業も含めハードルの高い選択肢しかないですが、地盤を引き継ぐことで成功しやすい方法を提供できるようにしたいです。
上場企業だったら誰でも株買って売れるじゃないですか。中小企業は公開してなければ誰も出来ない状態なので、そこの流動化を図っていきたいです。日本は課題の先進国だと思っているので、成功事例を作れたらグローバルのプラットフォームにできると思っています。
ーー改めて、森田さんがMANDAを経営する中で一番大事にされていることってなんでしょうか?
社会課題を解決するようなチャレンジを続けることです。利益を上げることも重要なのですが、社会課題を解決せずに利益を上げちゃうと継続できない。利益よりも課題解決を優先する課題オリエンテッドな経営を目指しています。
ーー今回の記事を通して、M&Aに興味を持った方に伝えたいメッセージはありますか?
127万社の課題解決って僕だけでも出来ないですし、既存のM&Aのプレイヤーみんなで頑張っても限界があると思っています。
なので、1人でも多くの人に課題解決にジョインしていただきたいと思っています。
ジョインの仕方は色々あると思うんですが、例えば近くに住んでいる自営業の方が後継者がいなくて悩んでいたら相談に乗ってあげるとか、中小企業の経営者で売りたい方がいればMANDAを紹介してもらうとか。
逆にサラリーマンの方でも今の自分のキャリアに疑問がある方は、一度M&Aを使って中小企業のオーナーになるというのも考えてもらえると色々自由な人生が切り開けると思います。僕自身もそうでした。
ーーM&Aを難しく考えすぎずに、キャリアの一つの選択肢としてもらえたらいいですね。本音ベースで沢山お話しいただきありがとうございました!
えぇ、そうですね!こちらこそ、ありがとうございました!