おはようございますこんにちはこんばんは。編集長のSeinaです。
覚悟、決意、コミット。こういう類のものって中々好きになれなかった自分がいる。何でかというと常に逃げ道を残しておきたかったから。全力疾走で、余力を残さず駆け回るなんてどこかかっこ悪いし、怖い。
どこかでそんな癖がついたまま大人になり、気づけばもう30歳。生畑目 星南(29)と生畑目 星南(30)のインパクトの違いに驚く。
退路を絶った私ではあるが、まだまだ楽をしていると思う。そんなタイミングでお世話になっている社長に喝を入れてもらった話をしようと思う。
前々からお世話になっているZさんに法人化のご報告をしたところ、飯に行こうとお誘いただく。ご一緒するのは、私の結婚式にも出席してもらったKさん。お二人とも地元・神奈川を拠点にバリバリと活躍されている会社の経営者だ。
前回も同じメンツでお食事をご一緒したのだが、とにかく面白い。くだらない話で盛り上がるときもあって、お酒にも適度に酔いつつ、経営者としてのスイッチが入ると一気に真剣なトークで熱い議論を交わす。そんな振り幅の大きさが大好きだ。
何かと気にかけていただき、声をかけてもらっているのが本当に有難い。根本的に人付き合いが得意な方ではない為、自ら食事を誘うことはあまりない。いや、全くない。
少し早めにお店に到着すると、Kさんは少し前からお店に到着されていたようで、既に一杯やっていた。間もなく、Zさんが到着して乾杯を交わすと「どうだ、事業は順調か?」と一言。
楽しいけど、ちょっとだけ緊張する。カウンターで肩を並べながら、ママによるお任せ料理を食べつつお酒はどんどん進んでいった。
お互いの近況を報告しあう時間がしばらく続いた。Kさんはこの炎天下の中でバリバリを働いていたら熱中症にかかり救急車で運ばれてしまったらしい。気づいた時には手足が痺れ動けなくなったと、とてもじゃないが他人事には思えなかった。
最近強く思うのは、自分自身がいくら貧乏になっても良いが会社は絶対に存続させなければならないという覚悟。フリーランス時代に収入が立たずに、飯が食えないという感覚とは全く異なる。
KさんもZさんも社員を雇用され、パートナーが沢山いるので、私が倒れた時の影響力とは比べ物にならない。大事には至らなかったので安心したが、思わずぞっとしてしまった。
お二人の雑談を聞いていると思うことがある。それは、会話の引き出しの広さ。もちろん人生経験による差もあると思う。私だったら、ふぅーんへぇーで終わってしまう話が、「それって〇〇ですよね。私も気になっていたんですよ」と会話がどんどん続いていく。
そしてもう一つ。お二人とも聞き上手ということだ。でも根底にあるのは相手やその物事に対する純粋な興味。ただ話を合わせたり、無理やり会話を膨らますのではなく純粋な好奇心を持って話を聞いている。
だから話す方もどんどんしゃべりたくなってしまうし、気持ちの良いお酒が飲めるのだ。そういう意味でも、沢山学ぶことがある。
料理も出そろい、私もクラフトビールならぬ、クラフトサワーを呑んでお酒が回ってきた頃にZさんに質問をした。私が会社から受け取る役員報酬は、法人設立後3か月以内に決めないといけないらしい。
株主会議を開いて議事録を残し、事前申告をしないといけないのだが、多く役員報酬を受け取れば、会社が赤字になるし、あまりにも報酬が少なければ課税対象額が増える。
では、一体何を基準に決定すればいいのか、僕は迷っていた。Zさんは丁寧に答えてくれた。
「そんなの深く考えずに20万なら20万。30万なら30万と決めて申告すればいいよ。3年はとにかくコツコツ実直に経営してごらん。」
「節税なんて今は考えなくていいよ、もちろん財務の勉強はしていった方がいいが、経営しながら嫌でも勉強しないといけなくなるから。小手先のテクニックよりも経営の本質を学びなさい」
はっ!仰せの通りに。経営の本質とは何か。頭の中を疑問とアルコールがぐるぐる回っているが答えはまだない。
でも、小さな事象よりも根本的な問いを突き詰めて考えて、経営者として成長することの方が重要なんだと教えてくれているのだと私は解釈をした。
私の両親は間もなく70歳、体も少しずつ衰えている。今は健康だがいつ大きな病にかかったと言われてもおかしくない。7つ上の姉は精神疾患を抱えている。社会復帰は非常に難しい。
“私が稼いで、姉を雇い入れれば家族の不安や負担も減るのではないかと思っています”と話してみた。Zさんは真剣な表情で言った。
「あのな、そんな家庭の状況なんて社長やってる連中はだれでも抱えてるよ。そんなことはいくらでも手段があるしネットで調べれば情報が出てくるだろう。どうにだって解決できるんだよ。
でもな、経営者になったからはっきり言うぞ。それをお前の会社と一緒に混合させるな。会社はそんな甘いもんじゃないぞ。お前が会社を作った目的は何だ?何らかの思いがあって会社にしたんだろう。
会社を作ったらそこに社会的責任が生まれるんだ。会社を作った目的と家族のことが本当に関係しているのかよく考えた方がいいぞ。」
話を聞きながら自然と背筋が伸びていた。襟を正してもらったと同時に、自分の甘さを痛感する。そして僕はとても運がいい。
こうやって自分が迷ったり悩んだりしたタイミングで適切な意見をくれる人がいる。足を向けて寝れないな、というのはこういう時に使うのだろう。
続けて、Zさんは言う。「お前が好きなことはなんだ?」どんな意図で聞いているのか分からず、少し不安になりながらもメディアを運営する楽しさや、日々修正・改善を繰り返しながら未知のことにチャレンジできる喜びを語らせてもらった。
「それを聞いて少し安心したよ。経営者になったらな、苦労することばっかりだよ。Kさんもそう。今まで沢山苦労してきたと思うよ。今も苦労されてると思う。
そんな日々の中で自分が楽しいこと、好きなことをやれてないと会社は続かないから。まずは今年一年たくさん勉強するんだね。」
会社を経営するという世界に一歩踏み入れて、その厳しさや険しさを思い知らされる。同時に己の甘さをがっつんがっつんと巨大な岩を投げられているような気持ちに沢山させられるる。
それでも、会社を経営するって大変だけど面白いし、沢山の出会いや別れ、成長があると信じている。そして叱ってもらえるのって有難いし嬉しい。
僕もいつか悩める経営者にそんな言葉をかけてあげられるだけの成長を遂げているだろうか。そんなことを考えた夜だった。
そして、お店を出る帰り際、お店のママさんから「あんた、今日は酔っぱらってないね。この間はほんっとにベロベロだったよね。あの時はまー大変だったわ。」
Zさんもママさんにしっかり喝を入れていた。その様子をSさんと一緒に眺めて笑いながら恥ずかしそうにするZさんと一緒にお店を後にした。
僕はまたこのお二人が好きになり、心に成長を誓った。