アパレル業界と聞くと「きらびやかで、華やかな世界」「常に、流行を先取りしている」というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか?そんなイメージも、間違いではありません。
しかし、常に流行を先取りして発信していく上では、流行を定着させたり、お客様がどういった変化を見ているのかというお客様の動向にも敏感でいなければなりません。
以前、筆者である私はアパレル業界で働いていました。トレンドは誰よりも1歩先を行くのではなく、半歩先を行くという意識を持ち仕事をしなさいと教えられました。
今回は、私がアパレル業界で疑問に感じた3つのことについて、ご紹介いたします。
「○○が流行る!」「今年の夏は、○○がトレンド!」こんな文字をファッション誌などで見かけたことはないでしょうか?
実は、アパレル業界のトレンドカラーは、2年前から決まっています。
メンズ・レディース・インテリア・メイクなどの4つのカテゴリーに分けられたなかで、加盟国各国の、色彩情報団体があらかじめ選んだ色をプレゼンし合い2年後の春夏(spring・summer)秋冬(autumn・winter)のトレンドカラーを約2日かけて決めているのです。
カラーが決まってからは、パリを中心に総合的なスタイリングオフィスが中心となりトレンドを発信していきます。
決まったトレンドは、ファッショントレンド情報会社が中心となり、トレンドブック(年二回発表されるスタイリングアイディアが詰まった本)によりデザイナーやバイヤーの元に渡ります。
そうして、ファッション誌やファッションコーディネーターなどに伝わり、アパレルショップでは、新作(来季のファッションを発表する会)などを経て、店頭に新作が並びます。
そのため、アパレル業界ではトレンドを先取することが出来ているのです。
引用URL:https://otokomaeken.com/mensfashion/6146
「そんなに前からトレンドが決まっているのであれば、誰よりも先取した方がショップ店員としては、いいんじゃない?」
と思うかもしれません。しかし、お客様から一番近いところにいるショップ店員としては、お客様のニーズを汲み取ることも大切な役目です。
そのため、お客様の憧れであり、一番身近な存在でいるためには、一歩先ではなくお客様よりも半歩先でトレンドを先取することが大切なのです。
お客様にとって、頼れるアドバイザー的な立ち位置にいることで、
お客様の動向も見逃さず「お客様がどういったものを求めているのか」「どうしたら、トレンドを定着させることができるのか」ということを、客観的に見つめることができるのです。
私がアパレル業界で感じたことは、前述で紹介したトレンドの話だけではありません。
トレンドや販売促進などももちろん業務上大切ですが、それよりも現場で仕事をしていく中で、顧客管理等に対して、セキュリティが緩く大丈夫なのか?
と思いながら働いていました。
今回は、そういった顧客管理等の甘さやその反面SNSの活用は積極的にしているといった、アパレル業界で「ん?」と感じた裏事情をお話します。
プライバシー保護法の関係により、顧客管理のセキュリティを高めている企業も多い中でも、私の働くショップでは、お客様カード(リピート見込みのあるお客様に個人情報を書いてもらうカード)を用意しており、それを顧客情報としてファイルに一括して管理をしていました。
そのファイルを利用して顧客管理に新作情報やセール情報のDMを送るわけですが、
DMの記入に間に合わず顧客情報ファイルを他の店のスタッフと共有の休憩室や、自宅などに持ち出して記入しているスタッフもおり、問題になりました。
また、在庫表などが紙でファイリングされているなどのアナログな面も多くありました。
その他にも、在庫管理をExcelで行っておりましたが、店のノートPCはWindowsXPと古く、Excelには「何について調べますか?」と聞いてくる謎のイルカが表示されていました。
ノートPCも見たことのないくらいの厚さ、起動に10分程かかるなど、業務に支障をきたすようなPCを使っていました。
当然、WindowsXPはサポートが終了しているため、セキュリティはガバガバのゆるゆるです。
ブランドや店舗によって、最新PCを取り入れたりタブレット端末を使って接客する店もあると思いますが、こういったアナログスタイルの店舗が未だに数多く存在しているのが現状です。
前述では、現場がアナログなことが多く「大丈夫だろうか?」と感じたことをご紹介しましたが、SNSを良く使いブランドカラーのうちだし、今季のトレンドをいち早く広げるための努力をしています。
また、アパレル店員はお客様の身近な存在であり、憧れでもあることから、カリスマ的な魅力を持つ店員がいることがあります。
カリスマ的な店員は、顧客も多くお客様の身近な憧れでもあることから、そういった店員が上手くSNSを使いこなすことで、トレンドを定着させることにつながっているのです。
顧客様だけでなく新規獲得のためには、InstagramやTwitterを上手く使いショップ店員のプライベートな様子(休憩時間やブランド商品を使った私服など)を載せて、
よりお客様の身近にいる、すぐに会いに行ける憧れのファッションアドバイザーとしての位置づけを上手くしているのだなと感じました。
ショップ店員は、そのブランドカラーに染まらなければならない。
より、ブランドを知ってもらうためには、自分がそのお店のマネキンとなる必要があります。そのためには、自社のブランドを身に着け纏う必要がありますが、洋服代は自腹です。
もちろん、社割といって○○%と割引が利きますが、商品の移り変わりが激しく店頭にあるもの・今販売している商品しか身に着けることができないといったことが多いため、季節が変わりトレンドが変わることで、新たな商品を購入し続けなければなりません。
そうなると、「常に社割を使っていて、今月もお金がない」といったことが多くあり、ショップ店員は少ない給与の中でもさらにお金がないなんてことが多いのです。
「でも、新しい商品を常に身に着けていられるのは、良いことじゃない?」と思うかもしれませんが、制服のように毎日身に着けている商品は、劣化も激しくすぐにボロボロになるためプライベートでは、身に着けられないことも多いです。
また、自分がマネキンとなるため身だしなみも気を付けなければなりません。筆者である私も、先輩スタッフに出勤の際さりげなく身だしなみチェックをされていました。
メイク・髪型・洋服、どれにも手を抜くことができず、トレンドに身を置き、きらびやかに見えるショップ店員は、意外とお金がかかるのです。
アパレル店員は、売るだけが仕事ではありません。お客様の動向を目で見て、感じながら売り上げを伸ばしていくという役割もあります。
また、効率よく仕事をこなしセキュリティ対策のためには、場面によってデジタル化も必要と感じました。
そして、自分自身が商品を魅力的に見せる一つの品であるため、自分へのメンテナンスも欠かすことができません。
しかし、トレンドはお客様よりも先を行き過ぎることのない半歩先を歩き、お客様の声に耳を傾ける。
これは、どの職種にも言えることのなのではないでしょうか?最先端を見つめることは大切なことですが、お客様の声を聞き寄り添うということが、結果に繋がっていくのだと思います。