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AUの中期経営計画を解説。抱き合わせ販売で財布の紐を握る戦略。

地元の呑み屋の新規開拓をしたくてしょうがない、編集長のSeinaです。

通信業界のプレゼン資料を解説シリーズ第3弾。今回はAU編です。

ソフトバンク編はコチラ
ドコモ編はコチラ

5G通信をどう捉え、何に焦点を当てるかについては各社戦略が全く異なっています。AUがキーワードとして挙げているのは、個人へのワクワク体験の提供と法人のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)推進の2つ。

この両者に対してどのように価値を提供していくのか。中期経営計画の内容をご紹介していきます。

※デジタルトランスフォーメーション=ITの浸透によって、生活を良い方向に変化させること

AUの中期経営計画

個人へワクワクを。法人の本業に貢献を。

今回の情報元となっているのは、2019年5月に発表された、中期経営計画。2020年から向こう3年の戦略について発表した内容です。

気になる方はコチラから見ることが出来ます。

プレゼン資料自体は共有されていない為、IR情報ページに記載されている画像、内容を参照しています。中期経営計画の内容としては以下の通りです。

1.5Gによるイノベーションの創出

2.通信とライフデザインの融合を目指す

3.+αで注力するのはグローバルと金融事業

上記3つの内容についてそれぞれ見ていきたいと思います。

1. 5Gによるイノベーションの創出

3社とも共通しているのは5G通信の実現によって社会にイノベーションが起こるということ。大容量、低遅延、多接続を実現する5G通信によって自社に様々なビジネスチャンスがあることは誰の目から見ても明らかです。

これを活かせるかどうかで今後の大手キャリア3社の勢力図に変動が起こる可能性があるくらいインパクトのある出来事。AUも5Gによって、様々なイノベーションが起こることを記載していますが、特徴的だったのは以下。

自治体や民間企業と協力してDXを推進して地域課題の解決を目指すことを冒頭に述べている点です。地方創生ファンドのイメージ図は下記参照。

地方創生に2019年4月に30億円をかけて設立された地方創生ファンド。下記の通り、特にIT系スタートアップ企業を中心に支
援していく方向性のようです。

2.通信とライフデザインの融合を目指す

今回の中期経営計画にでは対個人に対するテーマと対法人に対するテーマが明確に述べられています。対個人は、スマートフォンを起点にワクワクする体験を提供すること。

対法人は、通信を核として新たなビジネスモデル構築&お客さまのDXを推進することです。それぞれについて詳しく見ていきます。

スマートフォンを起点にワクワクする体験を提供

では、どのようにワクワクを提供するのか。文章としては以下のように書かれています。

通信だけでなく、ライフデザインサービスとのバンドルでリカーリングサービスを加速させ、ライフタイムバリューを最大化、総合ARPA収入の成長を目指してまいります。

あぁ、なんと分かりづらい説明文でしょうか。もう少し分かりやすい表現に直すと以下の通りです。

ライフデザインサービスを抱き合わせ販売し、継続取引を増やすことで契約者1人当たりの単価アップを目指します。

では具体的にどのようなサービスを抱き合わせるのか。資料によるとコマース、エネルギー、金融の3領域のようです。

コマースが何を指すかは不明ですが、AUでんきと決済サービスを推していきたいことは読み取れます。スマホの支払いをクレカに、じゃあ電気料金もAUに切り替えて一緒にクレカで払ってしまおう、というようなイメージで良いと思います。

それによって顧客との関係性が深まり解約率が大幅に減少した実績があり、さらに加速していきたい様子が見て取れます。

通信を核として新たなビジネスモデル構築&お客さまのDX推進サポート

一方法人に対してはどうか。対個人の中にも出てきたリカーリングビジネスを推し進めていきたいと書かれています。

上記で継続取引と訳したように、リカーリングビジネスとは、商品単体を販売して終わりではなく、継続して顧客から収益を上げるビジネスのことを指します。

コピー機を購入した後に、インク代を払い続けるのがまさにこれです。企業のビジネスにAUの持っている資源を活かしてITを組み込み長期的なパートナーシップを築いていきたいということなのでしょう。

3.+αで注力するのはグローバルと金融事業

通信事業の拡大を図りながら目指すはグローバル事業と金融事業の成長。グローバル事業は下記にある通り東南アジアを中心としてIoTを組み込んでいくことを戦略としています。

金融事業も下記の通り、あらゆる取引をAUを通じて行うスマートマネー構想の実現を目指しています。さながら息子の財布の紐を握る母親のようです。

AUのプレゼン資料の感想

中期経営計画のプレゼン資料がそのままデータとしてある訳ではなく、HPに文章を補足して書かれているためソフトバンクやドコモと単純な比較はできません。HPの文章を含めてプレゼン資料とみなし、個人的な感想を述べたいと思います。

1.図解はシンプルだが内容を詰め込みすぎ

ページ内にある資料はどれも、分かりやすく図解化され、きちんと読み手に理解されるよう作っている印象を受けます。しかし、スライド内に載せる情報量が多いため、一度見ただけではパッと理解するのは難しいかもしれません。

2.1スライドを2分割で使用

本ページに記載しているスライド資料の90%が上下で2分割、もしくは左右で2分割されています。資料を2分割するケースはBefore、Afterの変化や2つの事柄の比較をする際によく使用します。

1.とも関連しますがプレゼン資料の原則は1スライド1メッセージ。スライドによって別々に作って良いものもあるなぁと感じました。

3.専門用語が多すぎて疲弊

AUのプレゼン資料には圧倒的に横文字が多いです。普段私たちが日常的に使っている用語であれば問題ないのですが、その事業の関係者でなければ分からないような単語が並びます。

いちいち言葉の意味を検索して理解するという無駄なエネルギーを割いてしまうため、本プレゼン内容から専門用語を取り払い、平素な言葉にしたら理解度は大幅に向上すること間違いないでしょう。

まとめ

改めてまとめると、AUの中期経営計画は

1.5Gによるイノベーションの創出

2.通信とライフデザインの融合を目指す

3.+αで注力するのはグローバルと金融事業

に注力すると述べられており、プレゼン資料に対する評価は

1.図解はシンプルだが内容を詰め込みすぎ

2.1スライドを2分割で使用

3.専門用語が多すぎて疲弊

という私なりのまとめと感想でした。3社それぞれの視点があり、非常に興味深い内容になっていました。

是非お時間があればソフトバンク、ドコモ、AUのプレゼン資料を比較してみてくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

seina

独立と同時期に離婚を経験し、フリーランスとして半年ほど過ごした後、法人化。著書に「分かりやすい提案書の3RULE5DESIGN」「今さら聞けないテレアポのキソキホン」など。地元・横浜での立ち飲みがマイブーム。

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