突然ですが、現在日本にどのくらいの外国人の方が訪れているかご存知ですか?
日本政府観光局(JNTO)の統計データによると、毎月平均約270万人の外国人が訪日しているそうです。
2020年にはいよいよオリンピックの開催も予定されており、ますますその数が増えることは間違いないですね。
ところで、日本に来ている外国人の方々はいったいどんなところに宿泊しているのでしょう。
ラグジュアリな三ツ星ホテルや大手のホテルチェーンを利用する人ももちろん多いでしょう。
しかし、最近良く聞くのは宿泊費を節約するために格安ホテルに滞在するケースです。
日本の格安ホテルについては、日本人より外国人観光客の方が詳しいかもしれません。そんな中、日本でもここ数年Airbnb(エアビーアンドビー)というシステムが少しずつ浸透してきました。
いわゆる「民泊」と言われるシステムです。いったいどんなシステムになっているのか、実際に都内でAirbnbのスーパーホストをしている飯島氏にお話を聞いてきました。
まずAirbnb(以下エアビー)について簡単に説明しておきましょう。
エアビーは、宿泊施設や民宿を貸し出す人のためのプラットフォーム型ビジネスです。
アメリカのサンフランシスコに本社を置き、現在世界191ヵ国に600万件以上の宿泊先があるそうです(Airbnb公式サイトより)。
宿泊施設を提供する人々はホストと言われ、自宅の一部もしくは一軒まるごと貸し出して旅行者を受け入れています。
宿泊を希望するゲストはエアビーの公式サイトから予約が可能。国内だけでなく世界各国のホストを探すことができるので、海外旅行でエアビーを利用する人も増えています。
訪れた国の暮らしをそのまま体験できるところが、ホテルステイでは味わえない魅力だと言われています。
Airbnb公式HP
https://www.airbnb.jp/
イギリスや北米、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏の国では古くからB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)と呼ばれる民泊システムがありました。
B&Bとは朝食がついた格安の宿泊施設のこと。自宅をリフォームして家族で経営しているところが多いです。
日本の民宿よりさらに簡素な宿泊形態だと言えるでしょう。日本では民泊が一般的に広まってからまだ数年です。
2013年に国家戦略特別区域と呼ばれる経済特区だけにかぎって「特区民泊」が法制化されました。その後、2018年に全国を対象とする民泊新法が施行されています。
民泊新法が施行されてから、民泊事業を始めるためには都道府県知事等への届け出が必要になりました。また、宿泊を提供できる日数は年間180日以内と決められています。
エアビーについて簡単に説明してきました。しかし実際どのような方がホストをしているのか気になるところです。
自分の家を貸し出すってどんな感じ?
セキュリティ的にはどうなの?
そこで、現在都内の閑静な住宅街に立つ自宅を民泊の宿泊施設として貸し出している飯島氏にいろいろなギモンをぶつけてみました。
飯島氏はエアビーのスーパーホストでもあります。
スーパーホストとは「ゲストに最高の体験を提供し、全ホストに模範を示す経験豊富なホストに与えられる称号です」(Airbnb公式HPより)
つまり、お客様満足度の高いホストであるということ。そんな飯島氏はエアビーでご自宅をまるまる一軒宿泊施設として貸し出しています。
ーーエアビーのホストをするきっかけは?
家を新築したときに、素敵なうちが出来たので「飯島家の二人以外にも共有したい」と思ったのと、「おうちにも働いてほしい(お金を稼いでほしい)」と思ったのがきっかけですね。
そこでちょうどAirbnbの話を聞いて、おためしでやってみました。
すると、ちょうど京都の大学教授をやっていらっしゃるイギリス人の方が最初のゲストで、ものすごくいい人だったのでそこからハマったという感じです。
ーー自宅を一軒まるごと宿泊施設として提供されていますが、その間はどちらに?
近郊の県内に家があるのでそちらで過ごしています。今までは主に週末だけでしたが、今では予約が入ったら平日も宿泊提供しています。
ーーゲストに自宅を提供することに不安は?
特にありませんね。基本的に信頼関係があって成り立っているものなので。
家の中で見られたくない場所や触ってほしくないもの(筆者注:奥様はお料理が上手で大切な食器がたくさんあります)については事前に説明しますし、プライベートエリアはパーテーションで区切るなどしています。
ーーゲストはどのような人が?
8割が欧米からのお客様です。2割がアジア系や国内のゲスト。
ゲスト側もB&Bのシステムに慣れているというのも不安のない理由かもしれません。国内からのお客様も時々いらっしゃいますよ。
先日は関西方面から旅行に来たという姉妹の方が滞在されました。
とても仲良しで、2人でキッチンでお料理をしながら東京の滞在を楽しんでもらえたようです。
ーーゲストはどこまで家の中の物を使えるのですか?
「Private」と注意書きしていないものは、調理器具から食器、調味料などすべて使っていただいています。
お客様に喜んでいただくために、コーヒーやお茶などのセッティングはこだわりを持って揃えています。
ーーエアビーのホストをやって良かったことは?
ホストになって良かったのは、なんといっても「うちに泊まって旅がすごく楽しかった」「日本が好きになった」と良いフィードバックを頂けた時ですね。
政治の世界では、韓国・中国などの国と日本はいろいろありますが、民泊での民間交流では本当にみんな素敵な人たちばかりと繋がれます。
民泊をしていると日本を好きになってくださっている時間を持てますので、そこが良いところですね。
ーー逆にエアビーのホストをしていてデメリットを感じたことはありますか?
正直、あんまりないんです。しいて言うなら、日本の民泊新法が残念です。せっかく日本での民泊カルチャーが広がろうとしていたのに潰されてしまっているので残念です。
民泊新法の残念な点はなんといっても「年間のゲストの宿泊日数上限を180日とする」という点です。
これは民泊利用をするゲストの目線を全く考えてない悪法だと思ってます。
(筆者補足:長期滞在や年内にリピート滞在を希望するゲストが、ホストの営業状況によっては利用できない可能性がある)
ゲストから嫌な思いを受けた事は無いんです。有難い、ラッキーな事だと思っています。
民泊については、近隣住宅への迷惑や不法な宿泊業者などが問題になったこともありました。
確かに、今回の飯島氏のようにメリットだけを感じている民泊事業者ばかりではないのも事実でしょう。
民泊は、飯島氏が言っていたように「信頼関係のうえで成り立つ」システム。
訪れてくれた人に対するホスピタリティはオリンピック誘致で話題になった日本の「おもてなし」にもつながるものではないでしょうか。
政治的には殺伐とした関係の国の人々でも、民間レベルでの交流には人間同士同じ体温を感じられることも多いです。
民泊文化が日本に浸透するにはまだまだ課題も多いでしょう。
しかしそれが健全に機能し始めたとき、それは同時に「人を信頼できる」世界が築きあげられているとも言えるのではないでしょうか。最後まで読んでいただいてありがとうございました。